黒部峡谷の下ノ廊下での滑落死亡事故に関して

先週、黒部峡谷核心部の下ノ廊下を歩きました。

下ノ廊下とは

下ノ廊下とは黒部ダムから旧日電歩道を経て水平歩道を通って欅平駅に至る全長約24kmの一本道です。

標高自体は約1000mと大したことはありませんが、道中にエスケープルートはなく山小屋も阿曽原温泉小屋のみ。

さらに常にうっかり躓いたり、岩にザックが引っ掛かってバランスを崩すとそのまま黒部峡谷に滑落してしまい、まず助かることはありません。

注意

下ノ廊下は上級者コースなので登山初心者が歩くことは絶対にやめてください

はっきり言いますが死にます

その体験記はまた別の記事に書くとして、その道歩きのさなかで死について考えさせられる機会がありました。

下ノ廊下の道歩きの行程としては1日目に黒部ダム→別山谷出合→白竜峡→十字峡→仙人谷ダム→阿曽原温泉、2日目に阿曽原温泉→折尾谷→水平歩道→しじみ坂→欅平駅というスケジュールを選択しました。

ただし1日目の天気は悪く日中は雨予報でところにより雷雨を伴うという予報が出ていました。

実際には雷はありませんでしたが、終始小雨が降りときには本降りになったりとあまり良いコンディションではなく、下ノ廊下は常に足を踏み外せばさようならの世界なので常に神経を研ぎ澄ませながら集中して歩いていました。

そして事故は起こりました。

ちょうど下ノ廊下の十字峡と白竜峡の間を歩いていた時でした、ちょっとした道の途中に土がえぐれている場所がありました。

滑ったら危ない場所だなとちらっと思って、そのまま通り過ぎようと思ったら一緒に登っていた友人がなにか嫌なものを見たかもと突然言って、渓谷の下に目をやりました。

渓谷の下には人が滑落していました。谷底に落ちていたのです。

滑落した方は目視でも50mは落下していました。(その後の報道によると落差は100mはあったようです)

とにかくまずは声をかけると、辛うじて手は振ってくれたので意識があることは確認できました。しかし頭から血を流しているようで遠目にもかなり危険な状態。

しかし下ノ廊下はエスケープルートがなく、携帯の電波も通じない、もっとも最寄りの山小屋までも滑落現場からだと5時間程度はかかります。

とにかく気は動転しつつ、周りの登山者に声をかけてダメ元で携帯や無線で連絡を取れないか声をかけましたがどの方も連絡を取る手段を持ち合わせておらず、僕と一緒に登っていた足の早い友人が走ってもっとも近い阿曽原温泉小屋まで行って、ヘリを要請しました。(実際には先行していた女性登山者が先に滑落者を発見したようで友人が着く前までにヘリを要請してくれたようです)

そのあとにとにかく阿曽原温泉小屋まで歩いているとヘリが何機か黒部渓谷を飛んで、滑落者を救助したようでした。

意識はあったようなのでおそらく助かっただろうと、その日阿曽原温泉小屋にテント泊して翌日になんとか無事に下山したのですが、ニュースを見ると残念ながら亡くなってしまったようです。

参考 北アルプスの黒部川で滑落か 遺体は千葉の会社員男性産経新聞

久々に死について考えさせられました。とりとめのないことも次々と頭に浮かびました。

下ノ廊下では一歩間違えたら命が途絶えることを身をもって体験したこと。

僕らと先行した女性登山者以外は誰も滑落者を発見できなかったほどの険しい道であること。(ここを歩いている人は誰も気づいていなかった)

そして思いのほか下ノ廊下で滑落者(そのあと死亡)が出たことに対して他の登山客はあっけらかんとしていたことに驚いたり。

ちょうど阿蘇原温泉小屋に宿泊した日(事故が起こった日)は今シーズン最高の206人のテント泊だったようで、まるで涸沢のような混みようでした。大盛況です。

亡くなった方は千葉県在住の56歳の男性とのことでしたが、その方はどんな人生を歩んできたのか?

家族は今頃打ちひしがれているのではないか?

もしかしたら僕らが声をかけたのが最期の人間との言葉のやりとりだったのではないか?

そんなとりとめのないことを考えてしまうのです。

僕自身もけっこう今までの人生で死について考える機会というのがありました。

登山に関して言えば、御嶽山が噴火した当日に僕は奥穂高を目指して登山していました。もし登る山が御嶽山であったら今頃。。。と今でも考えます。

御嶽山の噴火の様子は次の日に登った奥穂高岳からもはっきりと確認できました。

登山愛好家として今回の御嶽山噴火について思うこと。

また、八ヶ岳の阿弥陀岳では道に迷って20時間近く山の中を彷徨いました。遭難です。

下山で道に迷ったら下ではなく山頂を目指せというのはガチだというのがよく分かりました。(上と下を行ったり来たりして無駄に体力を消耗しました)

八ヶ岳の赤岳に登頂!しかし阿弥陀岳にて遭難する。

旅に関して言えば、グランドキャニオンで風邪をこじらせて帰国後に一ヶ月近く入院したりしました。結核性胸膜炎とのことでもう少し発見が遅かったらやばかったです。

【考察】映画「イントゥ・ザ・ワイルド」の原作の「荒野へ」を読んでみた。

たまたま僕は運良く今も生きていますが、運が悪ければどうなっていたかは分かりません。

その差がなんなのかは分かりませんが、少なくともちゃんとした準備をしたり、適切な判断さえできれば不慮の事故の可能性は限りなくゼロに減らせます。

今週からメキシコの死を笑い飛ばすお祭り、死者の日に参加してきますが、先週下ノ廊下で体験した経験もひっくるめて写真という形に残せればと思うのです。

下ノ廊下はうっとりするほどに、ここは本当に日本なのかと思うほどに美しく険しい道でした。

下ノ廊下で亡くなられた方の御冥福を心よりお祈り致します。

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