竹沢うるま「Walkabout」を読んで。

先日読んだ竹沢うるまさんの旅行記「The Songlines」に非常に感動した。

それは以前のブログに感想を書いた通り。

竹沢うるま「The Songlines」を読んで。

その時の感想にも、いつかはThe Songlinesの対となる写真集であるWalkaboutも購入したいと書いたが、早速買ってきました。
(最寄りの本屋になかったので取り寄せてもらった。)

写真家であるうるまさんが旅を通してどんな写真を撮ってきたのか?何を感じたのか。

それを確かめることができた気がします。

タイトルのウォークアバウトとは、オーストラリア先住民のアボリジニが経験する「通過儀礼としての旅」のことです。

ちなみにソングラインとはオーストラリアの先住民のアボリジニが歌う「歌の道」のことです。二つの本は全くタイプがとこなりますが対となる本です。

旅が凝縮している。

竹沢うるま Walkabout

本書はうるまさんが3年弱にわたって103カ国を旅し、35万点という膨大な写真の中から280点を選び、まとめた写真集となっている。

なのでとにかく内容が濃い。そしてボリューミー。

320ページもあるので写真集の値段を考えるとかなり安いと思います。

また、103カ国もの膨大な旅の中から写真がピックアップされているので写真でうるまさんの世界一周の一部を追体験できる。

特に先にThe Songlinesを読んでいたので、アフリカの少数民族や東チベットの記事から自分が想像していたイメージと実際のうるまさんの写真ではどのように見えていたのかが比較できて、違った写真集の見方もできたことが良かった。

まさに二冊で一つ。どちらも買ってよかったと感じました。

竹沢うるま「The Songlines」を読んで。

そこに存在できたことが素晴らしい。

自分が本著を最後まで読んで、見て、感じたことを書きたい。

率直に感じたこととして、あえて誤解を覚悟で書けば、写真集の一部の写真は素人の自分でも同じように撮影できると感じた。

それは自分の写真の腕がうるまさんと同じレベルにあると言いたい訳では決してなく、現代の一眼レフは高性能になったことである意味で誰でもうまく撮れるようになってしまったことにあると思う。

誰でもシャッターボタンを半押ししてピントを合わせれば、あとはカメラが自動で適正露出を決めてくれるわけだ。

では、何から本著の写真に感動するのだろうか?

それは、その日、その場所にうるまさんが存在し写真として切り取ることができたからだと思う。

The Songlinesの感想にも書いたが、うるまさんの旅ははっきり言って重い。

というか旅する場所が危険で、下手をすれば命を落としかねない場所も多い。時には銃を突きつけられ、時には謎の病気におかされる。

そんな危険をおかしながらも、うるまさんがシャッターを切って撮ってきた写真の中から厳選された280点が本著であるならばこの本はもはや竹沢うるまの存在の証と言っても過言ではないのではないだろうか。

そこに存在してシャッターを切ってきたことに羨ましいです。

本帯のコメントが良かった。

竹沢うるま Trans Continent

最後に、本書とは正確には別だけどWalaboutの本帯の沢木耕太郎のコメントが非常に良かったので掲載します。

ここには、もし、私に確かな「腕」があったなら、世界をこのように撮りたかったという写真が存在している。

そして、その写真には、竹沢うるまという男の列しい生き方が映り込んでいる。

背後に甘い死の匂いを漂わせながら

-沢木耕太郎

特に「背後に甘い死の匂いを漂わせながら」という部分にぞくぞくした。

沢木耕太郎自身も1970年代に世界を旅して深夜特急という日本のバックパッカーのバイブルを書いている。

1970年代。おそらく世界情勢はインターネットが発達した今ほど見えやすくもなく、沢木耕太郎も死を覚悟して旅したはずだ。

だからこそこのようなコメントをうるまさんに送ったのでないだろうか。

登山家も冒険家も死を覚悟し、前に進む。一人旅のバックパッカーもある意味で死を覚悟して旅する。
(それについては以前にイントゥザワイルドの記事で書きました。)

映画「イントゥ・ザ・ワイルド」の原作!ジョン・クラカワーの「荒野へ」を読んで考えたこと。

死は見えないからこそ甘い。覗き込んでかいま見たくなる。(それがある意味ではスリルだし、無謀だ)

この写真集。そしてThe Songlinesにもそれが感じられました。

だから対極にある命が浮かび上がっている。