中華人民共和国の新疆ウイグル自治区のウルムチ地窩堡国際空港で拘束された話

こんにちは、ゆーせーです。

新疆ウイグル自治区を巡る中国政府の動きが深刻化してきました。

数年前から新疆ウイグル自治区の弾圧は活発化していましたが、香港での民主化デモ以降、いよいよというところまできたかなと思います。

自分は2017年と2019年に新疆ウイグル自治区のカシュガルを訪れたことがありますが、2017年当時から道ゆく人の3人に1人は公安(中国の警察)、ムスリム特有の長い髭やブルカの禁止や道の至る所で検閲があるなどの厳戒態勢でしたが、2019年には外国人が宿泊できる宿がさらに制限される、学校などの公共施設の写真撮影が禁止されるなどさらに弾圧が加速化していました。

そんな中で自分は2019年の旅の際にウルムチ地窩堡国際空港で一時的に拘束されました。ただの旅行者にもかかわらずです。

さすがに拘束されて帰国してからしばらくはブログにすらこの事実を書こうとは思いませんでしたが、このトラブルから早2年が経過し、昨今の新疆ウイグル自治区を巡る中国政府の動きをみてどうしても看過出来ず、書いておきたいなと思いました。

自分は新疆ウイグル自治区だけでなく、東チベットやそのほかの少数民族の住んでいる場所を訪れたことも多々ありますがどの場所も伝統的な家屋が破壊され無機質な近代ビルが建設されています。実感としてやはり弾圧は行われていると判断せざるをえません。

今回はさすがに拘束された際の写真やウルムチ地窩堡国際空港の写真はないので、自分が訪れたカシュガルの写真とともにその状況をお伝えできればと思います。

旅程に関して

この旅ではそもそもがイレギュラーな旅程でした。

もともと日本とカシュガルの往復航空券をこの旅の半年前くらいに事前に取得していました。

自分の旅のスケジュールの組み立て方として、だいたい半年から3ヶ月ほど前に海外航空券だけ押さえてから旅行の日程が近づいてきたら詳細を詰める、そんな決め方です。

この旅の時もカシュガルまでの航空券を押さえて、カシュガルを起点に中央アジアを巡ろうと考えていました。

しかし旅行の詳細を詰めれば詰めるほど、中央アジアを巡るには旅程が短すぎることが発覚。

仕方がないので、下記のスケジュールで旅しました。

  • カシュガルから陸路でイルケシュタム峠を越えてキルギスに入国
  • キルギスに滞在
  • キルギスの首都ビシュケクから空路で新疆ウイグル自治区のウルムチ経由でカシュガルに再入国

普通に考えればビシュケクからそのまま日本に帰国するのがベターなので、わざわざカシュガルに短期間で2回も滞在するのは不自然です。

とはいえ、すでに日本とカシュガルの往復航空券を格安航空券で取得しているので変更も効きません。

新疆ウイグル自治区は2017年にカシュガルを旅していた当時から敏感な地域であることは重々承知の上でしたが、一旅行者として変なトラブルには巻き込まれないだろうとたかを括って旅立ちました。

外国人を歓迎しない予兆

旅に出て、空港で拘束される前から予兆はありました。

行きの飛行機で日本から北京経由でカシュガルに降り立ったときに、空港のターンテーブルで自分の手荷物を持っているときに、空港の職員に話しかけられました。

最初は中国語でしたが、外国人で中国語が話せないことがわかると英語に切り替わり、なぜカシュガルにきた?滞在はビジネスが目的か?それとも観光か?と質問されました。

様々な国を旅してきましたが、入国時にそんな質問をされたのは初めてです。入国審査はもちろん北京で受けているので、なぜ?となりました。

カシュガル滞在時はそれ以上の詮索はありませんでしたが、2017年当時よりも人通りやナイトマーケットの活況はなくなっており、若い男性などの姿も明らかに減っていました。

かつてはウイグル人が生活していた高台民居風景区も廃墟となっており、入り口はバリケードで封鎖されていました。2017年は人も住んでいたのですが…

カシュガル散策!バザールとアニマルマーケットとウイグル族の集落へ。

外国人の宿泊施設も以前よりもさらに制限され、カシュガルオールドタウンユースホステルが宿泊できなくなっていました。

タシュクルガンからカシュガルへ。新疆ウイグル自治区は面白い。

さらには早朝には漢民族がウイグル人を訓練しているような場面にも遭遇しました。

どう考えても中国政府がウイグル人を監視、弾圧している緊迫感がそこにはありました。

拘束の発生

カシュガル滞在の後は予定通りのスケジュールをキルギスの首都であるビシュケクまでこなし、飛行機に乗ってウルムチ地窩堡国際空港に到着しました。

そしてそこでトラブルが発生しました。

ウルムチ地窩堡国際空港にて入国審査官にパスポートを提示した際に、普段よりも入念にパスポートをチェックされました。

チェックが終わるとその場で待機するように言われました。その時点で待機の理由は聞きましたが、回答はありませんでした。

そしてそのまま30分が経過。ビシュケクからカシュガルまで同じ便で到着した乗客はすでに誰もいません。

待機を要請された当初は、ほかの乗客も同様に何人か待機していたので、早く解放される可能性もあるかなと希望も持っていましたが、今や一人になりました。あきらかに何かを疑われていることは覚悟しました。

そして30分経過後に、空港内の別室に連れて行かれました。部屋の名前は拷問室です。いやあ、勘弁してくれとなりました。

伊藤忠などの中国駐在員が拘束されたなんて話はニュースで聞いていたので自分もそうなるのではないかと嫌な想像が次から次へと出てきます。

拷問室では、まずは空港職員から中国語でいろいろと質問されたのですが英語でわからないと答えていると英語になりました。

なんでカシュガルに短期で二回も滞在するんだ?なにかを運んだり、ビジネスしているんじゃないか?と予想通りの質問(拷問?)のオンパレードです。

自分はただの旅行者で、カシュガル滞在は航空券の都合から仕方がなかったと何度も説明しました。カシュガルから日本へ帰る航空券のチケットも見せました。

そして自分の手荷物やスマートフォン、カメラの画像は全て見られました。当然のごとく。

そしてこれが一回で終わらずに、空港職員が入れ替わり立ち替わりきては何度も質問の荷物のチェックをされました。総勢で20人くらいがきたと思います。

旅行にはカメラを2台とレンズを複数個持っていたので、ジャーナリストにでも間違われないかなと不安になりましたが、いくつかの写真を削除しろと言われただけでことなきをえました。

最終的には日本で働いている会社の名刺まで要求されましたが、結果的に問題ないことがわかったのか、解放されました。ここまでで最初に空港職員に待機を要請されてから約2時間が経過していました。

そのあとはウルムチからカシュガルに飛行機を乗り継いで、無事にカシュガルから北京経由で日本に帰国できました。

日本に帰国できてかなりほっとしたことを覚えています。

このトラブルから感じたこと

ウルムチ地窩堡国際空港の拘束ですが、本当に怖かったです。日本に帰れないかと真剣に思いました。

今までの中国領域の入国も空路や陸路など何回も経験しており、厳しいことは知っていましたが、ただの一旅行者に対してここまで徹底的にチェックするとは全く思っていませんでした。

新疆ウイグル自治区の問題は根深く、文化的・歴史的・政治的に語ると非常に長くなるし、自分はそこまで詳しくないが、自分の今回の経験からも明らかにみられたくないものがあるのは間違い無いと思います。

ウイグルに限らず香港の民主化デモも実際に訪れていますが、経済力を身に付けた中国が力で押さえつけようとする姿が最近は非常に顕著だと感じます。それは今回のコロナの中国の対応を見ても同様です。

2019年から2020年の香港民主化デモで感じたこと。

ウイグルも香港人も漢民族も同じ人間です。国や地域によって、経済格差やさまざまな差はあるにせよ自由に平和に生きることは出来ないのかと考えさせられます。

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